想い

おも・う おもふ 2 【思う/▽想う】

(動ワ五[ハ四])
(1)物事に対してある感情や意識をもつ。
(ア)心に浮かべる。また、想像する。
「―・ったままを書く」「―・っていた通りの人」「春を―・わせるような日」
(イ)希望する。願う。
「ヨーロッパへ行きたいと―・っている」
(ウ)恋い慕って、頭に思い浮かべる。
「私の彼女を―・う気持ちに偽りはない」「私のことを―・ってくれる人」
(エ)心配して、頭に思い浮かべる。思いやる。
「子を―・う親の心」「災害に遭った人のことを―・えば私など幸運なほうだ」
(オ)思い起こす。回想する。
「異郷で故国を―・う」「亡き母を―・う」
(2)(「〜と思う」の形で文の述語につけて用いられる)〜が現在における話し手の個人的な判断や推量であることを示す。〜だろう。
「あしたは晴れると―・う」「親は知らないだろうと―・う」
(3)(感情の内容を表す形容詞・形容動詞の連用形を伴い、「〜を…に思う」のような形で用いる)〜に対して、それが…であるという感情や評価をもつ。〜が…であると感ずる。
「母をなくした子をあわれに―・う」「仲のよい二人をうらやましく―・う」
(4)(判断の内容を表す名詞を伴い、「〜を…と思う」の形で用いる)〜に対して、それが…であるという判断をもつ。〜が…であると断定する。
「二人を同一人と―・っていた」「いずれの方法も最善とは―・えない」
(5)(「〜と思うと」「〜と思ったら」などの形で)二つのことがらが相次いで起こること、または二つのことがらが一緒に起こることを表す。〜するとすぐ。〜すると同時に。
「彼は、来たと―・ったらもう帰ってしまった」「こちらで本を読んでいるやつがいるかと―・うと、あちらでテレビを見ているやつがいる」
(6)(「思うに」、「思えば」などの形で副詞的に用いて)話し手の個人的な判断や推量であることを示す。けだし。恐らく。確かに。
「今にして―・うに、…」「―・えばずいぶん長い旅であった」
(7)そういう顔つきをする。気持ちを顔に表す。
「いみじくなげかしげに―・ひたり/竹取」
(8)気が合う。
「―・ふどち飲みての後は散りぬともよし/万葉 1656」
〔「念う」「憶う」「懐う」などとも書く〕
[可能] おもえる
[慣用] どうかと―/屁(へ)とも思わない・我と思わん者
思う故(え)に
〔「おもうゆえに」の転〕一生懸命心にかけた結果として。
「―逢ふものならばしましくも妹が目離(か)れて我(あれ)居らめやも/万葉 3731」
思う心(こころ)
(1)恋しく思う心。深い愛情。
「家にして結ひてし紐を解きさけず―をたれか知らなむ/万葉 3950」
(2)こうしたいという考え。
「生れし時より―ありし人にて/源氏(桐壺)」
思う事言わねば腹(はら)ふくる
心に思っていることを言わないでいるのは腹に物がつまっているようで落ち着かないものだ。
思う空(そら)
〔「空」はこころの意〕思う心持ち。
「―安くもあらず/万葉 4480」
思うところな・し
思慮がない。無分別である。
「所せきさましたる人こそ、うたて―・く見ゆれ/徒然 2」
思うどち
〔「どち」は仲間・友達の意〕気の合った者どうし。親しい仲間。
「或人の許に―さし集まりて/無名抄」
思う仲(なか)の小(こ)いさかい
親しい二人の間には、かえって小さな争いが起きやすいものだ。
思うに任せない
思うように物事が進まない。思いどおりにならない。
思うに別れ思わぬに添う
男女の縁は思うとおりにならないということ。
「世の中は月にむら雲花に風―/仮名草子・薄雪物語」
思う念力(ねんりき)岩をも通す
精魂こめてすれば、できないことはない。一念岩をも通す。
思うはかり
〔「はかり」は際限の意〕いろいろと考えること。思案。おもんぱかり。多く後に「なし」を伴って用いられる。
「聖も未だ見えず、使者をだにも上せねば―ぞなかりける/平家 12」
思う人
(1)心の合う人。親しい友人。
「古りにしさとの秋萩を―どち相見つるかも/万葉 1558」
(2)恋しく思う人。
「―来むと知りせば/万葉 2824」
(3)自分をかわいがってくれる人。
「まづは―にさまざまおくれ/源氏(若菜下)」


三省堂提供「大辞林 第二版」より


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